てくすた

ピクスタ株式会社のエンジニア・デザイナーがつづるよもやまテクニカルブログです

ベトナムオフショアのすすめ2 組織文化形成編

シンチャオ!ハノイからこんにちは。ピクスタのベトナム開発拠点PIXTA VIETNAM代表の小張と申します。 かつて一介のエンジニアだった私がベトナムに開発拠点を立ち上げに行き、 組織を成長させていく中で経験したことを不定期で書きたいと思います。

この記事は、PIXTA Advent Calendar 2017 10日目の記事です。

PIXTA VIETNAM について

  • 2015年7月 小張、ベトナムに移住。フランジアさんでオフショア開発をスタート (過去記事
  • 2016年5月 ベトナム・ハノイに現地法人設立 (過去記事
  • 2017年7月 オフィス移転
  • 2017年12月現在 社員約40名 うち半数がエンジニア
業務内容
  • 素材マーケットプレイス「PIXTA」の開発・運用の一部
  • 素材審査の一部
  • ポストプロダクションの一部(自社制作コンテンツ向け)

f:id:hamuyuuki:20171210124031j:plain フラットでオープンな社風を反映したベトナムオフィス。

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振り返り

現地法人を立ち上げて1年半、社員約40名の規模になりましたが、 これまでがんばってきたことはだいたい以下の6つです。

  • ベトナムにおける法人設立の実務
  • 社風・カルチャーの形成
  • 採用
  • 他拠点と連携しながら開発をどううまく回すか
  • 研究開発チームの立ち上げ
  • マネジメント、人事評価

この中から今日は2番めの「社風・カルチャーの形成」について。 これからオフショア拠点立ち上げを検討している方に、参考になれば幸いです。


PIXTA VIETNAM でどのように社風・カルチャーをつくってきたか

組織作りの初期段階でケアすべきことの一つは社風・カルチャーをどう作っていくかです。 成果を出しながら組織を拡大していくためには、自社にマッチした組織風土の形成が大事です。 海外拠点の立ち上げであれば、日本と文化や常識も違うため、特に注意が必要です。 色々と試行錯誤してきましたが、振り返ると私はだいたい以下のステップを踏んできました。

  1. 日本人ならではの特殊な「常識」に気づく
  2. 本質的に根付かせたいカルチャーを定義し、浸透させる
  3. ベトナム人を信じて任せる

①日本人ならではの特殊な「常識」に気づく

「報連相」「5S」など、日本人なら当たり前と思っていますが、 ベトナム人にとって当たり前ではありません。 実際、極端に言ってしまえばこれらは日本人同士うまくやるためのツールにすぎず、 そのままベトナムに持ち込んでもあまり意味がありません。 ベトナム人と働きながら、こういった日本人の常識=世界の非常識、を色々とインプットしました。

②本質的に根付かせたいカルチャーを定義し、浸透させる

法人設立と同時に、オフィス設計や採用基準、制度設計など、文化形成に関わるタスクを一気にやることになります。 社長一人で全部やる時間もないので、採用したベトナム人にどんどん任せたくなります。 しかし、ベトナムにも典型的な会社観や日本人観のようなものが既にあり、 任せっぱなしだと自社のカルチャーにフィットしないこともあります。

ピクスタには古くから「フラットでオープンな組織」「当事者意識」「自ら学び、挑戦する」というカルチャーがあります。 他にもありますが、上記は特にピクスタの特色であり、成果を出すベースであり、 ①の違いを理解した上でなおベトナム法人でも取り入れたいと思っていました。 しかし、ベトナムでは日本以上にこういったカルチャーの組織が少なく、 請負の業態やオペレーション中心の業務が多いからか以下のような組織観・仕事観を持つ人が多いです。

  • 「組織はトップダウン型で、ボスの意見には従う」
  • 「納期を守ることが大事」
  • 「日本人はお客様。従わなければならない」
  • 「ステップごとにしっかりした研修を用意する」

など。どれも前述のピクスタカルチャーと相容れないものです。

そこで、私が日本人の常識を一部捨てたように、ベトナム人にも一部の常識をリセットしてもらうべく 初期メンバーと会社・組織を一緒に大きくする中で、上述のカルチャーを 常に意識してこだわりを伝え、各業務においてそれらの観点から意見しました。 今では、それら初期メンバーが幹部になり、かなりの部分を体現してくれているため、 私が口をだすことはかなり減りましたが、メンバーが数十名以上に増える中で、別の課題も出てきています。  

③ベトナム人を信じて任せる

求める結果には妥協しませんが、プロセスについてはベトナム人のやりやすいやり方でまずはやってもらうことにしています。

特にベトナムオフショア拠点を立ち上げるというケースだと、日本ですでにある程度の組織規模・経験値があった上で ベトナムで立ち上げをやるケースが多いと思います。そのため、これまでの経験を踏まえていい結果を出そう、 失敗しないようにしようと、日本でうまくいった方法論に追従してもらいたくなりがちです。

しかし、ベトナム人にはベトナム人にあったやり方があり、それで成果を出してもらえるのが一番です。 日本人がうまくいったやり方は、あくまで参考として、取り入れるか現地メンバーに自分たちで考えてもらうようにしています。 成果を担保するあまり背景理解が十分ない状態で方法だけを押し付けてしまうと、「自分たちは尊重されていない」あるいは 「失敗してはいけない」という雰囲気を作り、社員が自ら考えたり、自発的に挑戦するのを阻害してしまい、組織として飛躍的成長が望めなくなります。

ただ、もちろん、「信じて任せる」を実践するには、ある程度の失敗を許容する必要があります。 日本側では起きないような失敗がおきてしまうため、日本側への説明が足りていないと「ベトナム(側)だめじゃん」となります。 日本でも過去に経験したように、ベトナムも失敗から学んでいくステップが成長過程で必要なのだと 日本側に理解しておいてもらうことが重要です。

まとめ

  PIXTA VIETNAM立ち上げ期の社風・カルチャー形成において以下の点を大事にしてきたという話でした。

  • 日本と現地の文化的違いを理解し、日本人ならではの常識を外側から捉え直す
  • 文化的違いを差し引いても本質的に浸透させたいカルチャーを抽出し伝えていく
  • 本社側の理解を得て、ある程度の失敗を許容しつつ現地に任せながら育てる

PIXTA VIETNAM の開発チームについてと、次回予告

今回は組織全体の話をしたのでシステム開発の話に触れませんでしたが、 PIXTA VIETNAMの開発チームは、developer チームとlabチームに分かれています。

developerチーム

いわゆるアプリケーション開発チーム。 Railsによる実装を中心としつつ、AWSのオペレーションも行なう(フルスタック的)のが特徴。

labチーム

機械学習など成果出るまでに時間がかかる不確実な開発を担当するチーム。 主に検索システムの改善に対し機械学習を含めたアプローチを行っている。

明日からの2日間は、そんなPIXTA VIETNAMのエンジニアから具体的な開発プロジェクトの紹介をします。 お楽しみに!

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